尾瀬木道の再生フレームプロジェクト

尾瀬アートweb展では、尾瀬で役割を終えた木道(廃木道)を、アートフレーム(額縁)として再生するプロジェクトを進めています。
そして2021年11月、プロジェクトの第一弾として、A4判作品対応のフレームが完成しました。

製作においては、東京電力リニューアブルパワー様、東京パワーテクノロジー様のご支援をいただき、今年9月に廃木道2本を無償で譲り受け、福島県浪江町に運搬。(株)ワタナベ様のご協力で、製材前の乾燥期間を経たのち今回のフレームに再生加工されました。

尾瀬国立公園は、群馬県・福島県・新潟県の県境に跨がるエリアに広がっています。今回のプロジェクトでは、山で切り出され、尾瀬での役割を終えた廃木道(カラマツ材)を、海に面した福島の町で「再生」させることが大きなねらいでした。

野積みされた廃木道
廃木道の断面
表面はビッケルなどの痕も
表層部はかなり傷んでいる

尾瀬の木道は、シーズン中には登山者の歩行を助け、貴重な湿原や森林を保護し、またシーズンオフの冬場には厳しい寒さや3メートル以上にも及ぶ積雪に耐えつつ、その役割を担っています。使用されるカラマツ材は防腐剤を使用していないため、傷みも早く、およそ10年で交換されます。交換された廃木道は、尾瀬ブランドの再生紙などの資源として有効に活用されていますが、このほど、その芯の部分を製材して、尾瀬のアートを引き立てるもう一つの「美」として、アートの祭典に登壇してもらうことになりました。

第一弾として完成したA4判サイズ対応
味わい深い木目
触った感触も温かい
しっかりとした仕立て

完成した「尾瀬木道の再生フレーム」は実に味わい深く、尾瀬の大自然の表情すらもっています。くっきりとした木目とダークにグラデーション化していく色合い。肌ざわりも柔らかで温かみが伝わってきます。シンプルでありながら、アートを引き立てる「名脇役」としての重厚な存在感にあふれています。しかも、尾瀬から福島へという再生への道のりには、ひとつの物語が宿っているのです。

このフレームが当アート展を通じて、広く関心が高まっていくことを願っています。


〈尾瀬の木道解説〉

尾瀬国立公園全体では、約65㎞の木道がある。尾瀬に木道のそもそもの始まりは、湿原のぬかるみがひどい場所を歩きやすくするためだった。しかも当初は、丸太を縦に割って平らにしたものや板が並べられただけだった。

それが昭和30年代になって、尾瀬を訪れる人が急増すると、湿原の踏み荒らしを防ぐために、行政や東京電力が木道整備に取り組み、現在の木道網として完成した。

木道は1基あたり長さ4m、寿命は7年〜10年とされ、計画的に交換され、尾瀬の自然保護のため、重要な役割を負っている。